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東京高等裁判所 昭和25年(う)1326号 判決 1950年8月03日

被告人

田端勘九郎

外一名

主文

本件控訴はいずれもこれを棄却する。

理由

被告人田端勘九郎の弁護人田畑喜与英の控訴趣意第一点について。

記録によれば、原審が昭和二十四年六月二十七日の公判期日において、検察官の請求にかかる証人倉林鼇太郎を証人として尋問する旨決定したが、同年七月七日の公判期日において、検察官から同証人の証拠調を抛棄する旨の陳述があり、裁判所が右取調決定を取消したこと、右取消を決定するに際し、被告人又は弁護人の意見を聽いた形跡がないことは所論のとおりである。而して証拠調の範囲を変更する場合において、裁判所は検察官及び被告人又は弁護人の意見を聽かなければならないことは、刑事訴訟法第二百九十七条の定めるところであるが、本件において証人倉林鼇太郎を取調べる旨の決定は検察官の取調請求に基いてなされたものであり、検察官においてはその請求を抛棄した以上、右証拠決定はその前提を缺きその証人取調はこれをなす必要なきに至つたものであつて、裁判所が右証拠決定を取消したのは、形式上存する取調決定の効力を取除いたに過ぎず、かかる場合には、取消について被告人又は弁護人の意見を聽くことを要しないものと解するを相当とする。従つて本論旨は理由がない。

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